風薫る季節に 〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。



暖冬暖冬と言われていたものが、急に途轍もない級の寒の戻りもあったのだから、
それを想えば用心していて正解だったともいえよう、
4月なのに都心で雪なんて異常な事態にもなった平成最後の春であり。
そんなせいか、この春の桜はほぼ通常運転だったのに、
花見に行く暇がなかっただの、ぶうたれる声も結構聞く。
確かに、雪が降るほど寒かったり雨も降ってはいたけれど、
雪はともかく 雨や嵐もどきの大風はさほど珍しいことじゃあなく、
それこそ花に嵐の無常とか毎年天気予報のお兄さんが言ってるじゃあないのと
セーラー服のひだスカートをお膝回りにふわりと広げ、
そこへと咲かせているかのような手際の良さにて、
ティッシュで八重桜のようなバラの造花を次々に作っている白百合さんが言い出せば。
少し濃いめの色合いので自分の二つ名みたいな紅色の花を開いていた久蔵殿が
うんうんと素直にうなずいておいで。
我らが丘の上の女学園は、毎度おなじみ“五月祭”の準備で天手古舞い状態で、

 五月の女王は誰が選ばれたんでしたっけね。
 さて覚えていませんが。
 ただ、今年の随臣というか衛士役は
 やっぱり欧州タイプの装いにしてほしいらしいです。

実行委員会と執行部が打ち合わせ中なのとは別枠の関係者。
もはやそれは動かせない縁起ものであるかのように、
こちらの三華様がたが
その年の女王とお付きの傍衆の姫らをエスコートする騎士に推挙されており。
したたる新緑の中、純白のドレスでしずしずと、
学園内の奥深くにある野外音楽堂にしつらえた式場までを行幸し、
代々受け継がれてきたティアラを学園長の手づから頭頂へと頂いて。
数日催されるプチ学園祭の名誉主催のような立場になり、
挨拶をしたり来賓の接待をした理に引き回される“五月の女神”は、
この女学園に憧れる名士のお嬢様たちにとって 最も栄誉ある勲章的な存在…だったはずが。
ここ数年ほどは、その立場になれば目の覚めるような麗しき男装の騎士様がたに
じきじきに手を取ってのエスコートされる栄誉が付いて来る、のほうが
それはそれは焦がれてしまうほどの憧れの対象になってる節が多々あって。

 『だって、あの紅バラ様の凛々しき冴えたご尊顔を間近に出来るのですよ?』
 『それを言ったら白百合様のあのお気遣いと甘やかなお声っvv』
 『ひなげし様の笑顔の愛らしさも、もうもう胸がきゅんとしてたまりませんわvv』

どこぞかの歌劇で余裕で主役を張れそうな、寡黙で凛々しいクールビューティの三木様に、
女性としての美貌も素晴らしく、心遣いが行き届いておいでの和風美人の草野様、
上級生からの人気絶大、才女なのにベビーフェイスが愛らしい林田様という、
女学園が誇る、それぞれに才ある美人三人小町ゆえ、(頭痛が痛い的な言い回しですいません)
こういう催しともなりゃあ何らかの格好で担ぎ出されるのにはもう慣れた。
しかも、

「勘兵衛さまが、
 そういう大役を負っておれば、
 何があってもそうそう飛び出してはゆけぬだろうって。」

もうもうもうと仄かな憤懣滲ませて白百合様が言い出せば、
ひなげし様も警戒用のタブレットの同調を確かめていた手を止めて顔を上げ、

「あー。ゴロさんも似たようなこと言ってた。
 お転婆の抑止力に丁度いいって。」

失礼だったらとぷんすこ頬を膨らませる横で、

「……。(頷、頷)」

何度も頷く無口な紅ばらさんの意を汲んで、
そっかぁ兵庫センセもかぁと、あとの二人が口許を尖らせる。
五月祭自体は実質五月始まりの1日に行われる一日こっきりの行事だが、
伝統ある代物なので準備が大変だし、来賓も多数お越しなので、
そちらへの対応へ職員の皆様やシスターたちが回られるため、
新入生歓迎という意味傾向の段取りは実行委員会へほぼ丸投げになる。
まだまだ新年度始まりなので学内での混乱はさほど起きていないし、
問題児が上がってきておればいたで、この祭事で炙り出せもしようと、

 「時々ふっふっふなんてほの暗い笑い方するのは辞めようね、ヘイさん。」
 「あん、いっけなぁ〜い、みゃはvv」

生徒にそこまでの強腰はいませんが過干渉な父兄へは毎度警戒してましてねと、
一体どこまでアンテナ広げておいでなのやら、
相変わらずに手ごわいひなげしさんである様子。
そんな彼女らしかいない準備室の窓辺で、さわさわとカーテンが揺れ、
もうすっかりと葉桜になった木々の若い緑がキラキラ望める。

「連休明けたら、令和なんですよねぇ。」
「あ、(そうだったねぇ。)」

「何ですよ、それ。」

玄関開けたら2分でごはんみたいにと平八が笑う。
むしろ なんでヘイさんがそんなフレーズ知ってるんだと七郎次が大笑いし、
こちらはさすがの令嬢で 何が何やらと久蔵がキョトンとしているのが何とも好対照。
慌ただしいのはマスコミだけか、
それでも何かが変わるらしい、新しい季節を前に、
お元気なお嬢様がたは相変わらずなご様子ですvv





   〜Fine〜  19.04.26.


 *天気予報やテレビ欄、
  1週間単位のにさりげなく5月の日付がすべり込んでおり、
  そうか、ついつい10連休の方に目が行ってたけれど、
  連休明けたら令和なのかと、しみじみ感じましたよ。

  そして何回目の“五月祭”なのか、(笑)
  もはやベテランの域で余裕で準備中のお姉さま方です。
  お天気に恵まれるといいですね。

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